研究テーマ

大規模非線形系の合理的な低次元化手法

まず,「線形」と「非線形」について説明しましょう.

「線形」とは変化が直線的であることを意味し,復元力が伸びに比例するばねは「線形ばね」,減衰力が速度に比例する減衰は「線形粘性減衰」と呼ばれます. 線形系の運動方程式は線形の微分方程式となり,重ね合わせの原理を用いて解析的に解くことができます.

一方,「非線形」とは線形ではないということで,線形以外の要素を表します. 例えば,ガタ,復元力が伸びに比例しないばね,クーロン摩擦などが非線形要素としてあげられます. 一般に,非線形系の運動方程式を解析的に解くことはできず,その解析には近似解法や数値計算が利用されます.

さて,実際の機械や構造物など大規模な系の振動解析を行う場合,「モード解析」という手法を使って系の自由度を小さくすることが一般に行われます(低次元化といいます). 線形系ではそれぞれのモードが互いに独立なので,このような低次元化が可能です.一方,非線形系でこのような低次元化を行うと,高精度な計算が困難となります.

この研究テーマでは,図1に例を示すような,部分的に強い非線形性を有する大規模自由度系を取り扱います. モデルを小さな要素に分割し,各要素の節点の運動方程式をたてると,ほとんどは非線形の要素を含まない節点であり,一部の節点のみ非線形要素を含みます. 節点を大部分の線形節点と少数の非線形節点に分離し,線形節点の運動方程式にのみモード解析を適用することによって,非線形要素を含む系の高精度な低次元化を実現する手法を提案しています(図2)

Fig.1 配管系の解析モデル Fig.2 フレキシブルアーム実験装置