平成26年度原子力・放射線と環境授業計画
工学部3年生対象,2単位,通年科目
担当,主 中村祐三(工,機械) nakamura@mech.kagoshima-u.ac.jp, 099-285-8262
福德 康雄(自然科学教育研究支援センター)fukutoky@chem.agri.kagoshima-u.ac.jp
授業の概要(目的と内容)
安定な大型エネルギー供給源としての原子力エネルギーの活用は必須とされ,国際的にも利用の規模は拡大しつつある.しかし,チェルノブイリ事故,福島第一原発事故等で見られたように,大量の放射性物質が環境に放たれた場合,多量の放射線被爆は生体に障害をもたらすため,原子力関連施設の重大事故が社会・環境に与える影響は甚大である.原子力発電の安全性,長期にわたる放射性廃棄物処理等,私たちが考えるべきことは多い.一方,医学,農学,理工学で用いられるように,放射性物質,放射線の利用技術は欠かせない.本講義では,原子核,放射線,原子力,エネルギー等に関する基礎的な知識を習得した上で,これらの技術,問題と経済・産業・社会・環境・地域の暮らし・健康との関係について洞察できる素養を育てることを目的とし,講義に加えて実習,討論,見学を通じて理解を深める.
受講学生が達成すべき目標
1)放射性崩壊ならびに各種放射線に関して基礎的な知識を得,さまざまな分野での応用技術について理解できる基礎知識を得ること.
2)放射線と物質および生体との相互作用に関する知識を基に,放射線の健康に与える影響について理解すること.
3)原子力発電の原理,構造ならびに周辺技術を理解し,社会・環境における役割と影響について考察できる能力を養うこと.
授業スケジュール
期日 | 1時限 (8:50-10:20) | 2時限 (10:30-12:00) | 3時限(12:50-14:20) | 4時限 (14:30-16:00) |
9月22日 (月) | 原子核物理の初歩(01) (中村) | 放射能と放射線I(01) -基礎(福徳) | 演習(111,112,121,123,131) | 演習 |
9月23日 (火) | 放射能と放射線II(01) -相互作用,技術 (福徳) | 放射能と放射線III(01) -生体への影響,法律 (福徳,01) | 演習 | オフィスアワー(111,中村研究室) |
9月24日 (水) | 特別講演(01) 原子力発電の原理 (九電,福永優一氏) | 特別講演(01) 原子力発電と地域 (九電,福永優一氏) 11:30まで | 川内原子力発電所見学* (中村,福永,他) 12:30出発 | |
9月25日 (木) | 基調講演(01) 我が国をとりまくエネルギー事情について (野村眞一氏**,01) | 対話会I (111,112,121,122,123,131,132,機械11,機械13) (SNWゲスト) | 対話会II (111,112,121,122,123,131,132,機械11,機械13) (SNWゲスト) | 3グループでの総合討論(111,121,131) 全体総括(01) (SNWゲスト) |
9月27日 (土) | 放射線と工学(201) 工学部における利用 (中村) | 特別講演(201) 放射線の利用技術と医療に用いられる放射線 (野村貴美氏***) | オフィスアワー (201,中村研究室) |
* 9月24日(水)に他の集中講義が重なっている人は,見学会をなしとして,代わりに9月27日(土)に授業を行ないますが,関心がある人は聴講してかまいません.
** 元三菱重工
*** 元東大准教授・放射線管理学会前会長
演習(9月22日,23日)理工学研究科技術職員の指導,ガイダンステキストを見ること
演習内容 A:環境放射線の測定(112) 吉野広大
B:天然放射能の測定(121) 谷口康太郎
C:GM管の作成(131) 中村喜寛 児島諒昭
D:霧箱作成(111) 満吉修二
E:カードシミュレーション(123) 池田亮
準備等(7月から):谷口康太郎(前田義和)
20名程度ずつ,5つのグループに分け,
グループ1 A → B → C → D → E
グループ2 B → C → D → E → A
グループ3 C → D → E → A → B
グループ4 D → E → A → B → C
グループ5 E → A → B → C → D
で回る.テーマに応じ,2~4名のチームを作る.空いた時間はレポート作成に使うこと.
見学(9月24日)
(1)日時: 平成24年9月24日(木) 12:30~16:30
(2)場所: 川内原子力発電所,同展示館
(3)引率: 鹿大:1号車,中村祐三,谷口康太郎,2号車,吉野広大,3号車,谷口遥菜
九電:1号車,福永優一,2号車,他
(4)スケジュール(予定)
12:30 鹿児島大学工学部出発
13:30~15:30 発電所概要説明展示館見学発電所構内見学訓練センター見学
15:30 川内原子力発電所展示館出発
16:30 鹿児島大学工学部稲盛会館到着・解散
(2)その他
フィールド学習として講義時間に含まれているので,不参加の場合には不合格とする.
集合時間の出欠調査までに来なかったものは見学不参加とみなす.
安全のため動きやすい服装,履物をしてくること.ただしだらしない服装はしないこと.
(雨天でも実施するためその際には嵩張らない雨具の用意をしておくこと)
喫煙,飲酒,その他見学に不適切な行為は禁止する.
気分が悪くなったり体調がおかしくなった場合には直ちに引率に申し出ること.
(6)見学中止の場合
事情により見学が中止になった場合には講義中に知らせる(当日の場合にはメールで知らせ
る).登校可能な場合には見学の補講として,01 号教室にて授業を行う.見学・登校が不可能となった場合には補講の措置を通知する(本年度は27日の講義・講演で補講とする).
対話会(9月25日)
1.
1)A~Iで割り振ったグループに分けて対話会を行います.(対話会の会場は下記4)
2)対話後グループごとに検討した内容を総括してもらいます.
3)各グループのリーダー,サブリーダーが討論その他を取り仕切ってください.
4)各グループには討論をアシストする専門家が(下記4)が参加します.
5)3グループでの発表会を行い,検討を深めます.
講義棟111(Aグループ、Bグループ、Gグループ)
講義棟121(Cグループ、Dグループ、Hグループ)
講義棟131(Eグループ、Fグループ、Iグループ)
6)最後に全グループの総括を行ないます.(講義棟01)
7)各自が弁当を購入しグループごとに会食して授業外のことでも交流を深めます.
2.事前アンケートについて
皆さんにいただいた事前アンケートは,4に記した専門家の皆さんが回答にかなう
調査をされています.それを踏まえた上,予習・検討のうえ,討論をしてください.
専門家による回答は授業開始時に配布します.
3.昼食会
各グループで昼食会を催しますので,授業外のことでも交流を深めてください.
4.
グループ毎の担当シニア:◎はファシリテータ
【Aグループ】(講義棟111)(③高レベル放射性廃棄物処理・処分の今後)
◎金氏 顯 (北九州産業技術保存継承センター、元三菱重工)
田辺博三 (原子力環境整備促進・資金管理センター シニアテクニカルアドバイザー)
香川達雄 (元女子栄養大学理事長、元東芝):オブザーバー
【Bグループ】(講義棟112)(①福島原発事故の原因と今後の安全性)
◎大野 崇 (前文部科学省原子力安全課防災環境対策室技術参与、元三菱重工)
樋口勝彦 (元西日本技術開発、元九州電力)
【Cグループ】(講義棟123)(①福島原発事故の原因と今後の安全性)
◎路次安憲 (三菱電機プラントエンジニアリング)
櫻井雄一 (西日本プラント工業、元九州電力)
【Dグループ】(講義棟121)(④原子力と社会、マスコミ、教育)
◎三谷信次 (原子力コニュ二ケイションズ、元日立、元JNES)
大塚徳勝 (元日本原子力研究所、元東海大学)
【Eグループ】(講義棟122)(①福島原発事故の原因と今後の安全性)
◎村島正康 (西日本技術開発、元九州電力)
工藤和彦 (九州大学名誉教授)
【Fグループ】(講義棟131)(④原子力と社会、マスコミ、教育)
◎泉舘昭雄 (泉舘技術士事務所、元新日鉄)
木下智見 (九州大学名誉教授)
【Gグループ】(講義棟132)(②今後の日本のエネルギー政策、ベストミックス)
◎廣 陽二 (西日本技術開発、元九州電力)
門 久義 (鹿児島大学名誉教授)
【Hグループ】(機械11)(②今後の日本のエネルギー政策、ベストミックス)
◎松永健一 (三菱日立パワーシステムズ)
西郷正雄 (元原子力安全委員会技術参与、元原産協会、元富士電機)
【I グループ】(機械13)(②今後の日本のエネルギー政策、ベストミックス)
◎小池正実 (九電産業、元九州電力)
野村眞一 (元三菱重工)
成績の評価基準・授業外学習
1)45時間に相当する授業外学習のレポート課題を設定する.
2)全課題に対して2/3以上の回答を成績付与の対象とし,90%以上をA,80%以上をB,70%以上をC,60%以上をD,これ未満ならびにコピーと見られる場合にFとする.
3)評価には,論理的思考,課題への考察,レポートの簡潔でわかりやすい書き方なども含まれる.
参考書・教科書
適宜資料を配布する.
修得しておくべき科目・必要な予備知識
物理・化学・生物学・数学の基礎,現代物理基礎:これらの科目を受けてない者は受講を勧めない.
学科の学習・教育目標との関連
人間,社会,環境に及ぼす問題において,工学的因子ならびにヒューマン因子が伴うシステム設計・管理・工学倫理に関する分野,各学科の学習・教育目標において本科目の目的と関連する分野
レポート提出期限・提出先
平成26年11月7日(金)午後5時まで(以降の提出は受け取らない)
工学部学生係に備えている提出箱にいれること(提出確認印をもらうこと)
※高校理科教職課程,物理選択科目
本授業は高校理科教職課程の物理の選択科目であり,講義に加え,実習・見学による教育効果について検討する.
※エックス線発生装置取扱者の教育訓練
本授業を受講したものは,次年度のエックス線取り扱い教育訓練を免除する.また,本年度のエックス線教育訓練を受けられなかったものは,本講義中,放射能と放射線I,II,IIIを受講することで,教育訓練に置き換える.
講義や課題に対する問い合わせ
科目代表 中村祐三,機械工学科第2棟 1階 中村研究室実験室
電話(099)-285-8262(来る前に連絡すること)
電子メールnakamura@mech.kagoshima-u.ac.jp
事前アンケート
Aグループ
希望テーマ:③,①,②,④
・福島原発事故で生じた放射能を含む土砂は最終的にどうするのか
・もし原発が廃止になった場合はどう対策するのか.
・脱原発と原発推進派両方が納得できるエネルギー対策とは.
・仮に福島原発事故のようなことが起こった場合の対策
・最近でも汚染物質漏れがニュースにもなっているが,今までの処理技術で漏れを防ぐことはできるのか.また,漏れた後の汚染物質はどう対処しているのか.
・福島での事故以降,問題が全く見つからなかったということはなかったであろうと思うので,その後どこを改良したか.
Bグループ
希望テーマ:①,②,③,④
・なんで事故が起こったのか.
・放射線の被爆量の安全基準はどのようにして決められているのか.
・放射性廃棄物が飽和していると聞いたが,現在どのようになっているか.
・原発事故の際報道規制されていたが,実際まだ隠されていることはあるのか.
・世界ではどのようになっているのか.
Cグループ
希望テーマ:①,②,③,④
・原発の定期検査ってどのようなものですか.
・原発廃止になった場合,日本で必要なエネルギーはまかなえるのか.
・政府は,原発を稼動させたいみたいだが,原発じゃないといけないのか.
・放射線による人体や食べものへの影響は具体的にどのようなものか.
・原発の安全基準がかなり厳しくなったが,どこがどのように変わったか.
・原発がなくなった場合の新エネルギーは考えていますか.
・原発が停止した場合の経済的な影響.
・原発が果たしうる役割として「エネルギーの安定確保」以外で挙げられるものはあるか.安全保障上のものを中心にいくつか教えて欲しい.
・原発あるいは原子力に関わる技術にはこれからの行方についてどうおもうのでしょうか.
・原発停止後の放射性物質の扱いはどうなるのか.
・自然災害など予測できない物に対しての安全基準はどう定めるのか.
Dグループ
希望テーマ:④,①,②,③
・原子力に代わる方法で,コストや発電力がいいものはあるのか.
・原子力発電の燃料のリサイクルとは,どのようにリサイクルできるのか.
・放射性がどのようなところで得になるのか.
・川内原発再稼動に反対する川内市の人々の反対理由とは何か.不安とは何か.
・原発再稼動について反対派があるのに,再稼動をするメリットはあるのか.
・原発停止によって,電力の供給面にどのような影響があるのか.
・原発から出る放射線での環境への影響はあるのか.
・佐賀出身なのですが,もし玄海原発が事故を起こした場合,どのような影響が予想されるか.
Eグループ
希望テーマ:①,②,③,④
・川内原発は再稼動して大丈夫なのか.
・津波への安全対策は大丈夫なのか.
・なぜ川内原発が安全審査を通ることができたのか.他の原発と安全性に違いがあったのか.
・再稼動が最初に行なわれるのがなぜ川内原発なのか.
・非常用電源を別に高台に設置,さらに高台に非常用電源車を配備していると聞いたことがあるが,非常用電源車は電源を迅速に供給することができるか.
・非常用電源車は距離が発電所からあるのではないか.また,非常用電源車付近に,これを扱う人員が常駐しているのか.
・放射性廃棄物の処理方法,又,それを行なうためのコスト,年月.行なう際に汚染が起こることはないのか.その土地,自然環境への影響はないのか.
・原子力発電とその他の発電方法の発電効率の差はどの程度か.
・核燃料はリサイクルできないのか.
・環境放射線の示し方について,数字のみを示すだけでいいのか.その数値の意味を理解している人はどのぐらいいるのか.
Fグループ
希望テーマ:④,②,③,①
・原子力発電所は結局あるほうが良いのか,無い方が良いのか.またその理由.
・放射線はなぜ身体に悪いのか.→悪いのに治療が出来るのはなぜ.
・原子力発電所の安全対策はどのようになっているか.
・反原発の運動に対してどう思っているか.
・CO2排出の少ない発電として有名な原子力発電だが,原材料であるウラン等の埋蔵量は大丈夫なのか.また,原材料が尽きてしまった後はどうするのか.
・結局原子力発電は安全なのか.
・原子力発電の仕組み.
・原発を停止させたままで電力はたりているのか.
・マスコミの報道はすべて事実なのか.
Gグループ
希望テーマ:②,④
②について
・原子力が活動していない今,どのようにエネルギー(電気)をまかなっているのか.
・新エネルギー(太陽光,風力など)が注目されているが,それをより普及させる政策はあるのか.
・核融合炉が実用段階まで至ったら,日本でも稼動する可能性はあるのか.
④について
・福島の事故直後に情報は正しく私たちに伝わっていたのですか.
・教育の現場で,原子力についての情報は教えられているか.
・原発に関して,マスコミの存在意義,今後の教育は,どうあるべきか.
・原発は今,日本でもっとも注目されている話題といってもよいほどですが,小学生など子どもに対しての教育はほとんどされておりません.そのへんはどう考えているのですか.
・原子力の安全神話は誰が何の為につくったのか.
Hグループ
希望テーマ:②,③,①,④
②について
・今後,原子力発電は全体の何割を占めるのがベストか.
・原発をなくして火力発電などを使うのが本当に良いことなのか.
・各国の特徴を生かしたクリーン発電で協力することはできるか.
・原子力発電に代替する,いわゆるクリーンエネルギーの需要がなく,コストが高くかかる問題を解決するための手段は今後どう改善していくべきか.
・原発に代わる代替エネルギーの,未利用エネルギー活用の実例はあるのか.
・原発を廃止したとして,それに代替できるエネルギー政策はあるのか.
・原発を廃止したときの,経済への影響と電力供給の変化
①について
・福島原発で放射線被害を受けた人たちへの身体の影響で様々な意見が挙げられているが実際どれほどの影響があるのか.
③について
・放射性廃棄物を地中に埋めた後にどうなるのか.ずっとそのままなのか.
Iグループ
希望テーマ:②,④,①,③
②に関して
・原子力をこえるエネルギーは今後誕生しうるのか.
・どんなデータを元に発電方法の全体的な組み合わせを決めるのか.
・なんで原子力にこだわるのか.
・原子力を停止した場合に必要な電力を何でまかなえるか.
・どうして川内原発が最初の再稼動になったのか.
④に関して
・川内原発の再稼動に対する住民の意見の影響力
・危険性ばかりとりあげられているが,安全性についてはどうなのか.
・福島の風評被害とは.
・農作物への影響について,どのように農家に説明しているのか.
・風評被害に対抗するイメージアップ活動について.
ファシリテーション用紙(対話会用)
学科 | 学科 | 学年 | 年 | 氏名 |
対話会で期待すること,対話会前に考えたこと,予習してきたこと等《箇条書き》 |
対話会で聞きたい質問,疑問,要望等《箇条書き》 |
対話会で学んだこと,不足と感じたこと,将来学びたいこと等《箇条書き》 |