鹿児島大学工学部機械工学科西村研究室
- 研究概要
- 非線形制御を中心とした理論・解析・応用の研究を行っております.主な研究テーマは下記の通りです.
- 制御理論
- 確率Lyapunov安定論をベースとした確率制御問題(Development of Stochastic Stability Theory)
システムにノイズはつきものです.ノイズは不規則にシステムに入り込むため,様々な大きさのゲインや周波数が含まれています.それらを統一的に扱う手段として,ホワイトノイズ(白色雑音)という概念があります.ホワイトノイズが含まれるシステムを一般的に確率システムと言います.通常,ノイズは除去すべき対象です.そこで,どのような場合にどれだけ抑制が可能なのかについて研究を進めています.また,確率システムを制御する為には,確定システムにはない様々な問題を解決する必要があるので,その理論的な解析も行っています.
- 非有界変動関数を含む制御則によるシステムの簡略化と制御問題(Stabilization by Noise)
通常,ノイズは除去すべき対象です.しかし,実は「適切に設計されたノイズ」はシステムを安定化させることができます.この現象そのものはノイズによる安定化(Stabilization by Noise)と言って古くから知られていますが,なぜ・どのようにこの現象が起きるかの解析はまだまだ発展途上です.この問題に対し,まずホワイトノイズがどの程度の「制御性能」を持っているかを明らかにしました.そして,ノイズによる安定化の本質の一つが,ノイズの非有界変動性にあることを突き止めました.このことは,ノイズが加えられるシステムはもはや微分方程式では表現しきれず,確率微分方程式よりも広いクラスであるラフ微分方程式(rough differential equation)によって記述されるべきであるとの西村の主張の根拠となりました.現在は,ホワイトノイズに限らない「非有界変動関数」によってどういったシステムがどのように表現され,そしてどれくらい「制御可能となるか」について研究しております.
- 非ホロノミックシステムの安定化問題(Stabilization of Nonholonomic Systems)
自動車,船舶,宇宙機など,制御対象の自由度に比べて制御入力の自由度が低いシステムを非ホロノミックシステムと言います.例えば,自動車は「アクセル・ブレーキの前後方向」と「ハンドル操作」が可能なので制御入力は2自由度になりますが,自動車そのものは「前後」・「左右」・「車の向き」と3自由度あります.このようなシステムを自動制御するのは理論的にも難しいのです.制御方法としては,時変フィードバックを用いる方法と,不連続フィードバックを用いる方法があります.ある程度のモデル化誤差やノイズがあっても制御目的が達成できるようなにするためには不連続フィードバックの方が良いという傾向がありますが,制御則のどこにどのような不連続性を入れるのが良いのか,という難しい問題が残されています.
- 非線形最適制御(Nonlinear Optimal Control)
最適制御という制御方法があります.簡単に言えば「あるコストを最小にしつつ制御目標を達成するような制御」です.線形システムの場合,LQ制御(Linear Quadratic Control)という有名なものがあり,現在では比較的容易に制御則が得られるようになっています.しかし,非線形システムの場合は厳密な解を求めるのが困難なケースがほとんどです.そこで,この問題に対していろいろなアプローチを行っています.
- 制御応用
- 超音波モータのモデルベースド制御(Model-Based Control of Ultrasonic Motor)
超音波モータは,圧電素子に電流を加え,発生した超音波振動によって駆動するモータです.DCモータのような電磁モータと比較して,低速高トルク性,高速応答性,電磁両立性,高保持トルク性,位置決めの高精度性などの利点がある為,いろいろな方面から注目を集めています.ただし,超音波モータは構造が複雑なので物理モデルを求めるのが難しく,さまざまな非線形特性を持っているため制御に苦労が付きまといます.そこで,同定試験により非線形システムモデルを構築し,更に最先端の非線形制御理論を適用することで高速高精度でロバストな制御を達成しようと日夜研究しています.
- アクティブ動吸振器の制振性能向上(Development of Disturbance Attenuation Performances for Active Dynamic Vibration Absorber)
ビルのような構造物への地震や加工機のびびり振動など,システムそのものが振動してしまうことがよくあります.そのため,一般的には動吸振器のような機構をシステムに取り入れて振動を抑制します.ただし,現実にはその振動数は時々刻々変化するため,最大限の制振性能を得るためにはアクティブ動吸振器による制御を行う必要があります.そこで,最先端の制御理論(とりわけ非線形制御理論)を取り入れて最も効率の良い制振制御機構を開発しています.
- 過去の研究
- 非線形システムに対するLyapunov関数の構築問題
システムの挙動がある点に落ち着くかどうかは,(平衡点の)安定性という性質により決まります.線形システムの場合,Routh-Hurwitzの方法やナイキストの方法,Lyapunovの方法などが有名です.非線形システムの場合はLyapunovの方法が有名ですが,安定性を保証するLyapunov関数をどのように求めるかは難しい問題です.そこで,風上差分法とMarkov過程の量子化という2つの手法を掛け合わせた近似構築手法を提案しました.(博士後期課程時〜山口大学在籍時.代表研究者:西村悠樹)
- 上肢障碍者用食事支援ロボットの開発
手や腕の動かせない上肢障碍者のために,足や目や声を使って操作できる食事支援ロボットの開発にも携わっていました(山口大学在籍時.代表研究者:田中幹也教授).
- 最適化問題
一度の同定試験でPID制御のゲインチューニングを行うFRITや,最適化手法の一つである粒子群最適化(PSO)の安定性解析,分散協調制御の最適化などの最適化問題にも携わっていました(山口大学在籍時.代表研究者:若佐裕治准教授).
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